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コラム

『ルール』とは何か-後編-

2022年3月4日
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ピーアールコンビナートでは、グループ会社のオズマピーアールとともに、自社の事業にかかわるルール形成をワンストップでサポートするサービス「ルール形成コミュニケーション」(パブリックアフェアーズ)を提供しています。本コラムではプロジェクトメンバーの井上が、そもそもルールとは何なのか、を2回にわたって、掘り下げて考えていきたいと思います。

 

後編では、わたしたちの身の周りにある、明示化されていないルールについて考えていきます。

価値観や規範、慣習、倫理は、法律や調達ガイドラインなどと同様、あるいはそれよりも大きなルール形成力を持ちます。価値観や規範、慣習のような「暗黙のルール」は法律のような「明示されたルール」とは異なります。「暗黙のルール」を破っても外形上罰則はありませんが、心の中で「破ってはいけない」と、強制力が働きます。

 

これに関して有名な研究があります。イスラエルの託児所での話ですが、子どものお迎えの遅刻に対する解決策として罰金を導入した所、親の遅刻が罰によって減少せずにむしろ増加したそうです。これまではお迎えへの遅刻が保育士さんへの罪の意識・モラル・内発的動機で構成されていた行動が、罰金付きのルールになった途端、「お金を払えば遅れてもいい」という金銭的な取引に変化したためと考えられます。

なお価値観や規範、慣習には大きく「古いもの」と「新しいもの」の2つの方向性があります。前者がすでに社会の常識となっている「伝統的な価値観」であるのに対し、後者は、従来の価値観にチャレンジする「新たな理念」と言えます。2つの価値観はいわば世論というリングで主導権を巡り争っています。例えば、気候正義のように理性に基づく新たな理念(今どきの言葉でいうところの「新しい社会課題」)だった価値観も、時代が変わるにつれ、世論において主導権を握り、「社会の常識」となります。

 

気候変動対策や経済安全保障、人種問題やジェンダー・ギャップなどの人権アジェンダのような、近年注視されるようになった「新しい社会課題(=イシュー)」により、企業経営のあり方やビジネスモデルの変革が求められるケースが増えています。

 

一方で、それらイシューに対して、賛同を率先して表明するなど真摯に対応することで、事業活動の評価を高める企業も現れ始めました。

サプライチェーンにおける人権の問題や、海外市場の政治問題、経済安全保障などのイシューに直面した時に、企業はどのようにリスクを評価しメッセージを発信すべきでしょうか。レピュテーションの毀損を避けるためにリスクを避けるのか、レピュテーションを高めるためにあえてリスクを取るのか、企業の一挙手一投足が常に監視されている中、イシューに対する生活者の支持やグローバル市場への影響を見据えた、素早い経営判断が求められます。

 

これまで企業は、「法律的には問題ないが、倫理的に問題となる」ことを避けるために、大多数の人が賛同を示す「伝統的な価値観」「社会の常識」を順守する、つまり Don’ts(すべからず)というアプローチが一般的でした。しかし昨今では、賛否両論の中あえてリスクを取り、イシューへの賛同を率先して表明する事で、競合との差別化を図り企業のレピュテーションを高める考え方、すなわち Dos(すべし)というアプローチが求められているのではないでしょうか。

法律・条例のようなポリシーセクターが定める強制力のあるルール(狭義のルール)だけでなく、法的強制力はないが、ビジネスセクターによる自主規制や各種ガイドライン、ソーシャルセクターにおいて一種の「空気」になっている世論や社会規範なども事実上のルール(広義のルール)を形成しています。

 

ルール形成においては、従来のロビー活動のように法律を変える事がそのままゴールになる事もあれば、経営戦略としてデファクトスタンダードを目指したり、世間の「常識」を変えたり、コミュニティ内の「摩擦」を解消したりといったコミュニケーションによる解決がゴールになる事もあります。

 

さらに各セクター間における影響のメカニズムが存在します。当然、法律はビジネスにも市民にも影響を与えますが、企業の先進的な調達ガイドラインは法にも影響を与えます。新しい倫理観は、市民の意識を変え、企業の製品・サービスを変え、法改正への追い風となります。

 

オズマグループでは、このように複雑に絡み合う各セクターごとのルールのメカニズムを紐解き、新たなソリューションを開発する研究機関「イシュー研究会」を立ち上げています。みなさんぜひご期待ください。

 

written by

PR3部 コミュニケーション・プロデューサー  井上 優介

 

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